第7話:RACE!


 江國優作、グリュッグ・アードリガー、四御神砂、十時・ツェルバ、王瀬・ラピメント、柴塚蒔和。
 彼らはサーキットエリアにやって来た。

 案の定、このエリアには男子生徒達が多く見られる。

 子供向けのバッテリーカーは勿論、大人も楽しむ為の本格的サーキット場も設置されている。
 BW一番人気アトラクションはジェットコースター系だが、このカートエリアは男性ユーザーからの人気が圧倒的に高い。

「お~・・・子供向けにしては、かなりイイ感じの場所だな」
 入る前に、どんな感じなのか見ておこうと言う砂の案で、エリアを見学する事にした一同。
 たまたま目に入った【ゴーカート・バトルレース】では、マスコットキャラの『ワンダ君』と一緒に、中等部の男子生徒達がレーシングバトルを繰り広げている最中である。

「3番の車、抜かれて・・・・・・おっと、抜き返したやん」
「3番を抜いたのは・・・・・・1番ですネ?アウトコースに出てしまった隙を逃さなかった様ですヨ?」
「やりますねぇ」

と、いち観客としてレースを楽しんでいる。


「今遊んでるコイツらのレースが終わったら、オレ達も遊んでみるか?」
 砂の案に、賛成と言う声が上がった。
「なるほど・・・。ほんなら、最後に負けたヤツは罰ゲームやな~?」
と、優作が余計な案を上げると全員が一瞬だけ口篭ってしまったが、
「面白そうだね。恨みっこ無しの個人戦か」
 蒔和が楽しそうにしながら、賛成派として頷いた。
「地球の車の運転は未だやった事が無いけど・・・・・・勝負と聞いたら参加しなきゃね」
「車酔いだけが悩みの種ですねぇ~・・・・・・あっ、自分の運転ですから自己責任ですか?」
「受けて立ちまス。バイクだと自分と砂だけが有利ですからネ」
 続いて、自他共に認める勝負師の王瀬も賛成すると、十時とグリュッグも参戦する気になった様だった。

 6人中1人だけが罰ゲームを受けるのは気の毒だと云う事で(何が「気の毒」かは謎だが)話し合いの結果、5位と6位が罰ゲームを敢行する事になった。



「あのぉ~・・・・・・」

 6人の背後から女性の声が聞こえて来たので振り返ると、チェッカーフラッグを持った女性スタッフが立っていた。
「新アトラクションの【ヒートサーキット】でしたら、待ち時間無しで御案内出来ますが・・・・・・いかがでしょう?」
 その誘いに6人は互いに顔を見合わせて、どうしようかとアイコンタクトを交わす。
「ほな、皆で行くか?」
「そうだな。新アトラクションってのも面白そうだし、いっちょう行ってみるか」
 皆が口々に賛成意見を出したので、女性スタッフは一礼をしてから6人を【ヒートサーキット】のエリアまで先導した。

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≪ヒートサーキット≫※一部アート使い限定有り
 対象:10歳以上 身長:140cm以上 制限体重:20~80kg 
 初心者用のカートも御用意しておりますので、お子様や女性も安心して楽しむ事が出来ます。
 最高速度は控え目ですが、本物のレーサーさながらの性能や操作性を持っています。

 また、アート使い限定で楽しめるコースも御用意しております。
 レーシングカートにアートを同調させた『アートレーサー』が挑むのは、障害物付きのロングコース。
 アートと一緒に障害物を乗り越え、栄光のゴールを駆け抜けよう!

~コース紹介~
■初めての方でも安心!初心・初級専用ショートコース■
■本格的レーサー気分!中級者専用ロングコース■
■立ちはだかる障害物を越えて行け!アート使い限定ロングコース■

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 一同は限定ロングコースを選ぶと、ルール説明・操作方法・コース案内、そして一番重要なポイントでもある「カートにアートを同調させる事」などについてのレクチャーを受けた。
 
「カートはコチラからお選び下さい」

 用意されていた車体カラーがそれぞれ違っているので、他の観客が見学していても区別しやすい。

 砂は青、優作は赤、グリュッグは白、十時は緑、王瀬は紫、蒔和は黒を選んだ。
 カートに乗るのが初めての王瀬と蒔和は、再度スタッフに運転方法を詳しく聞きながら、空いているスペースで軽く運転練習をしている。
 スタッフの教え方が良かったのか、2人は短い時間で運転方法を理解する事が出来た。


『アートをカートに同調させる』
 これは、坪ノ内硝悟が開発した『物質にアート能力を伝道し、エネルギーとして利用する【トラスト・システム】』を採用している。
 カート自体にトラストシステムを施し、同調と同時に各種システムを発動。
 このアトラクションは「カーレース」と云うジャンルから、防御システムが強化されているので、乗車しているマスターを接触事故などの被害から守る役割を果たしており、毎日行われているメンテナンスの賜物で事故やトラブルは起こっていない。

 ちなみに、このアトラクションで使われているシステムは、以下の通りである。
 探索システムは、コース内の障害物のチェック。
 攻撃システムは、エンジンを加速させ、速度調整。
 回復システムは、ピットインとしての役割。
 交渉システムは、レース中の連絡用。



「トイ・ダイス。それじゃ、さっき教えてもらった通り、カートと同調してみようか」
『畏まりました。それでは、開始します・・・・・・・・・・・・マスター、成功しました』
「ほぉ~。王瀬、飲み込み早いやん。ワシらも準備や。リィン、出来そうか?」
『・・・・・・優作さま、完了しました。』
「傘塔載車。ほらほら、私の意のままに疾走して下さいねぇー」
『ドウスルカナー・・・・・・罰ゲーム受ケサセテモ悪クナイカモナ』
「アシェ、大丈夫ですカ?難しいのならバ、棄権しても構いませんヨ?」
『ん・・・・・・大丈夫なの。アシェは、レースでグーが負ける所、見たくない。だから、がんばるの』
「蔦が結構はみ出してるけど、同調は出来たみたいだね。いい子だね、イリちゃん」
『キシャー!!シャーシャーシャー!!』


 地球製アトラクションの初心者ハンデとして、異世界人の王瀬と蒔和が1・2コースに入り、優作・十時・砂・グリュッグの順でコースに入った。

「えーと。ギアチェンジってのは、こうだっけ・・・・・・?」
「そうそう、そんな感じかな」
 車体越しにギア確認をしている王瀬と蒔和を見て、砂と十時が間に入った。
「オイオイ王瀬、今からそんなんで大丈夫かー?罰ゲーム覚悟だな~?」
「ははは、本番は大丈夫でしょうかー?」
 4人の遣り取りを眺めていたグリュッグと優作は、再度ハンドルの動きやブレーキ動作の確認作業に入った。
「スピードを出しながらの、安全確認は大事ですからネ」
「ホンマやな。何せ罰ゲームも賭かっとるし、5・6位だけは勘弁や~」
「はイ。頑張りましょウ!」

 エンジンを噴かせながら、スタートの合図を待っていると、スタートラインにチェッカーフラッグを持った女性スタッフが出て来た。

「スタートまで30秒を切りましたが、アートとの同調確認はオッケー?」

 フラッグを振りながら、6人に向けて元気にアナウンスをする。

「よーし。それじゃ、頑張りますよー」
「準備万端!ワシが優勝したるで!!」
「罰ゲームだけは勘弁だ」
「体力ゲームは久し振りだから、楽しみだなぁ」
「怪我には注意ですネ」
「スピード出しながら、安全運転・・・・・・か」


「スタート10秒前!!9、8、7、6、5、4、3、2、1、Go!!」


 スタート合図と同時に、6台のカートがスタートラインを駆け抜けた。




 まず、先頭で飛び出したのが優作。
 王瀬と蒔和の間を難無く駆け抜け、約3台分のリードを作った。
「リィン、まずはこの距離をキープや。後半に向けて調整しとくんやで」
『はい』

「へぇー。罰ゲームは勘弁だからなー・・・・・・采、優作を抜かさない程度で並ぶぞ」
『(マスターの罰ゲームも見たい気もするが)了解っ、任せろ!』

 優作と並べる程度に、後ろから砂が迫っている。
 それを追うのは後続4人で、最後尾は意外にも「ゲーム」と名の付くモノには負け無しと思われていた王瀬だった。

「あー・・・・・・身体を使うゲームは苦手だもんなぁ。トイ・ダイス、なるべく離されない様に付いて行きたいけど、大丈夫かい?」
『お任せ下さい』
 トイ・ダイスの力強い答えに頷くと、アクセルペダルを強く踏み込んだ。


『グー。追い抜かれちゃった・・・』
「一応、策ですからネ。さて・・・・・・どうやって攻め込んで行きましょウ?」
 グリュッグも後続チームに入っていたものの、どこか余裕を持ったまま先頭グループと付かず離れずの距離を保ち、悠々と作戦を練り始めた。

「さーて、イリちゃんの慣らしも済んだ事だし・・・・・・そろそろ詰めてみようかな」
『キシャー!!』

「ベッキィー。いいですか、負けたら罰ゲームです。傘の骨を折られたくなかったら、5位と6位は避けますよ」
『折ラレテタマルカ!!』



 直線コースの先に見えたのは、序盤の山場・4連カーブ。
 カートに同調したアート達は、タイヤがロックしない程度のブレーキと云う行動を各々のマスター達に伝える。
 狙いはインコース、なるべくコースの右側に外れない事。


 アート達が発した指令により、6人のカートが淡く光った事で【トラスト・システム】が正常に作動した事が確認された。


 まずは、先頭の優作&リィンがインコースに入りながら、後続車をジワジワと引き離す。
 それを見ていた砂は、最後の3箇所目のカーブに狙いを定めた。
「采、最後のカーブで抜く!!振り下ろされるんじゃねーぜ!」
『我を甘く見るな!』
 優作が3箇所目のカーブに差し掛かった所を狙うと、采と砂との意識がシンクロしたと同時に、トラストシステムの攻撃システムが反応し、一気にブーストが掛かった感覚を感じた。
「いっ・・・けぇぇぇぇぇ!!」
 気合と共に思わず叫び声が上がったが、その勢いを乗せたまま、優作がカーブを走り切る前に砂が先頭へと抉り込む様に入った。
「よーし・・・・・・」
『見たか、我の機動力!!』
 マスターである砂の歓声は、采が綺麗に奪い取ってしまった。


『申し訳ありません、優作さま。砂さまに追い抜かれてしまいました』
 抑揚の無い淡々とした口調がリィンの「普通」なので、機械との遣り取りを行っている錯覚になってしまいそうになる。
 優作は最近アート使いとして覚醒したばかりなので、アートとの遣り取りには不慣れな所が有るのも事実。
 しかも、自分がレースのシステムに少々戸惑っている節もあるので、もしかしたらリィンは不機嫌になってるのかな?と解釈してしまい、あくまでも自然に、軽く話してみる事にした。
「まだ上位やから、この距離をキープしておく事が大事やでー。ほな、頑張ろか?」
『畏ま・・・・・・承知しました』
「リィン。そのフレーズ、どっかで聞いた事がある様な無い様な、そうでない様な・・・・・・どないやろ?」
『なんでやねん』
「なんでやねん!」
 意外とそうでも無いかな?と、思わずにはいられない優作だった。


『砂と采、調子良さそう・・・・・・グーを負けさせたくないの』
 グリュッグは、慣れた手付きでハンドルを切りながらカーブポイントをクリアすると、アシェのポツリと呟いた一言に反応した。
「御心配有難う御座いまス。ですガ、自分が負ける事より・・・アシェがこのシステムに対応出来るかどうかが心配なのでス。先程も伺いましたが・・・・・・もしも、アシェの身体に悪い影響が出る様でしたら、自分は負けても構いませン・・・・・・棄権する事を惜しみませんヨ」
『・・・・・・ん、ありがと。グーが頑張るなら、アシェはグーより・・・もっともっと頑張れるの』
 今は姿こそ見えないが、小さなアシェの、力の篭った大きな言葉にグリュッグの口元が綻んだ。
「そうですカ・・・・・・ならば、勝利を「聖騎士」の名の下に・・・・・・!」
 アクセルペダルを勢い良く踏み付けると、第2の障害物を捉えた。


 次のポイントは、コース全体に低めのジャンプ台の様な障害物が鎮座されている。
 それを見たグリュッグは、
「ジャンプ台・・・・・・モトクロスみたいですネ」
と、意味合いも口調も程好く軽い感想を述べた。
「アシェ。少しばかり、跳ね上がりまス。」
『うん。用意は出来てるの。ブレーキ、掛けちゃダメだよ?アシェの計算だと、加速を付けたまま飛べば、先頭グループに抉り込めるの』
 アシェの持つ風貌の愛らしさとは裏腹に、あまりにも大胆でストレートな指示を聞いたグリュッグは一瞬だけ呆気に取られたが、すぐに気を引き締めた。
「・・・素晴らしいでス。では、神と衝撃緩衝に祈りを捧げま・・・・・・ス!!」
 アクセルペダルを強く踏み込むと、ギュゥゥゥン!!と、回転速度を更に増したタイヤとエンジン音を聞き、2人の闘争心に火が灯いた。

 ジャンプ台を昇ると同時に走り切ると、アルファルトも何も無い宙に浮きながらも、確実に前へ前へとカートは進んで行く。
 アスファルトに着地した際に、ドスンッ!と云う衝撃を感じたが、トラストシステムからの衝撃緩衝のおかげで、身体に重大な支障は感じられなかった。



「ははは。皆なかなか運転が上手いですねぇ~。悠々とした安全運転では負けそうですよ」
と、後続グループの1人の十時は余裕なのか、それとも余裕風なのかが判り辛い様子。
「最後のワンツーフィニッシュにさえならなければ・・・・・・と、思ってましたけど、そろそろ私も頑張ってみましょうかねぇ?」
『遅ェーヨ!オレ様ダッテ、シバラク前カラ突ッ走リタクテ、ウズウズシテタンダゾ!!』
「はいはい、本当すいませんねぇ、申し訳ありませんでしたよ」
 ベッキィーの抗議に対し、棒読み口調で真摯に謝る。
『イッソ土下座シロ!!思イ切リ走リタクテ参加シタッテ言ウノニ・・・・・・』
「はいはいはい、お喋りは終了ですよ。次の障害物は・・・・・・おやおや、ベッキィーと相性が良さそうですねぇ?」
 まだ続きそうだったベッキィーの抗議を聞き流しつつ、新手の障害物を発見した事を伝えた事で、抗議を強制終了させた。
 遠目に見えた障害物は、コースを埋め尽くす程の巨大な水溜りだった。
 先行グループは、水溜まりの影響でタイヤを取られてしまったり、スピード低下させざるを得ない障害物だった。
「ベッキィー、水です。思い切り吸収して、一気に差を縮めますよ」
『マカセロ!!行クゼェ~・・・ウオオオオオ!』
 水溜りに入った瞬間、ベッキィーが水溜りの水を吸い上げ、スピードを出して走行するには最適な環境を作り出した。
 走り易そうなコースを選ぶと、遅れを取り戻すかの様にアクセルペダルを思い切り踏み付け、手早くハンドルを操作して先頭グループに狙いを定めた。
 後続の為に(?)吸い込んだ水を戻す事を忘れない辺りは、ちゃっかりしているとしか思えない。
「ベッキィー。お上手でしたよ、まあまあ合格です」
『オイ十時・・・「マアマア」ッテ、ドウイウ意味ダ』


 前半ポイントは、大コーナー最後に訪れる通称『勝利の分岐点』
 ショートカットルートのジグザグ坂のオフロードコース or 迂回ルートのオンロードコース。
 距離か走りやすさか。これが各レーサー達の勝敗を分けると言っても過言では無いほどの最大のポイントでもある。

 そして、2つのコースが合流したら最終カーブコースを迎え、最後はアクセル全開でストレートコースを走り切ってゴールを切るのみとなっている。


 勿論、彼らも例外では無く、レース開始前から分岐点について頭を捻らせていた。
 少しでも距離と順位を縮めようとしている十時・砂はオフロード。
 アートを気遣ったグリュッグと、シンクロを取り戻そうという切り替えの為、優作はオンロードを選択。
 


 分岐点を間近の、蒔和とイリデッセンス。
『キシャー!シャーシャー!!』
「ははは、イリちゃんご機嫌だね、そんなにカーレースを気に入ってくれるとは思わなかったよ」
『グルルル・・・シャー!』
 序盤は慣らしの為に後続グループだったが、時間と共にイリデッセンスがレースの楽しみを感じ始めたらしく、もっと走りたいと蒔和に伝えている。
「じゃあ、迂回コースになっちゃうけど・・・・・・心地良いぐらい思いっきり走れるみたいだし、問題無いよね?」
『キ・・・ッシャーーー!!!』
 イリデッセンスが歓喜の叫びを上げると、トラストシステムが反応を起こし、エンジンと言うよりカート全体に激しいブーストが入った感覚が起こった。
 分岐点が目に入ると、スピードを落とさないまま迂回コースに飛び込んだ。
「よーし。それじゃ、迂回しちゃうけど・・・・・・他の皆に追い付こう!!」
『シャーーー!!』
 綺麗に舗装と整備の行き届いたオンロードなので、とにかく走りやすい。障害物を気にする事も無く、スピードを思う存分に出す事が出来る。
「風!イリちゃんも僕も風みたいだ!!」
『シャーシャーシャーシャー!!!』

 グリュッグと優作の姿が薄っすらと見えて来た。
「さすがイリちゃん。これで勝利に近付いて来た・・・・・・最後まで気を抜いちゃダメだよ!」
『グルルルルル・・・・・・キシャー!!』


 下位グループと云うより、本当に下位に居たのは、相変わらず王瀬だった。
「うーん・・・・・・この調子だと、僕が下位ぶっちぎりだね」
『申し訳ありません!』
「いや、いいよ。トイ・ダイスのせいじゃないからさ。今は5人の運転の技術を見て覚えておこうか。イカサマじゃないけど、怯んだ瞬間は必ず出て来るハズだから、そこを狙って逆転っていう手も確保しておきたいからなぁ」
『畏まりました!』
 王瀬もようやく分岐点コースに差し掛かった。
「・・・・・・ショートカット決定」
『仰せのままに』
 王瀬はショートカットのジグザグ坂道コースに入った。
 オフロードならではの走りにくさに加え、まずは昇り坂道なのでタイヤと路面の凸凹が大きくて思った通りに走れないものの、ショートカットと云う事は伊達では無いらしく、下り坂を覗き込むと先頭グループの砂と十時の後姿が見えた。
 ハンドルとタイヤを凸凹道に取られながらも、ニンマリと笑った。
「トイ・ダイス、衝撃緩衝の用意を。砂君と十時君を越すよ」
と、指示を出すとアクセルペダルを強く踏み、エンジンをフル回転させて凸凹上り坂を一気に駆け抜ける。
 上り坂を登り、頂上に到着しそうになった所で、アクセルペダルを壊しそうなぐらいの力で踏み付けた。
「跳べ」
 王瀬の乗ったカートは勢いを付けたまま、地面では無くて宙を進んでおり、砂と十時の頭上を飛び越える。
 地面への落下衝撃を受けながらも、トイ・ダイスのおかげで甚大な被害も無く通常コースに入った。
「大博打だったけど、ショートカット成功」
 カートの角度を直す為に、一度ブレーキを切りながら体勢を整える。

 その間に、砂と十時が坂道コースを走り終えてフィールドコースに戻った。
 それから数秒経過してから、迂回コースからグリュッグと優作がコースに戻って来た。


 最終カーブではチキンレース張りにギリギリまでブレーキを踏むのを堪え、互いにタイミングを計りながら決定的なタイミングでブレーキを踏み付ける。
 一気にスピードがガクンと落ち、Gが身体に掛かってしまったかの様な圧迫感を感じながらも、マシンをコントロールしながら最後のカーブをクリアした。
 障害物は何も無い、最後はストレートコースのみ、そしてゴールを駆け抜けるだけだ。

 トップは砂と優作が守っていたが、背後から最後の力を振り絞ったかの様なスピードで十時が3位に浮上した。
 それを間近で追う蒔和とグリュッグ、そして一気に距離を縮める事に成功した王瀬。
 全員が固まってゴールを目指しており、誰がトップを獲るかは残り数十メートル先で決定される。


「最後はもう・・・・・・走りきるだけだァァァァ!!!」



 








 監視塔からゴールを確認したスタッフが、内線電話を手に取ってシステムセンターに繋げた。

「ヒートサーキットの志田です。・・・・・・えぇ、只今乗車されていた生徒は・・・・・・【江國優作】【王瀬・ラピメント】【グリュッグ・アードリガー】【四御神砂】【柴塚蒔和】【十時・ツェルバ】、以上の6名が乗車しておりました・・・・・・はい、少々お待ち下さい・・・・・・」

 モニター画面の【トラスト・システム起動終了しました】と云う文字を確認してから、再び応答する。


「裏コードNo2≪支配≫データ転送完了しました」







■登場人物紹介■
江國優作(男性/17歳/高等部2年/青朗狗/アート:リィンカネーション/人型)

四御神砂(男性/15歳/高等部2年/黒砕竜/アート:采/人型)
十時・ツェルバ(男性/20歳/大学部2年/黒礼蛇/アート:ベッキィー)

王瀬・ラピメント(男性/19歳/大学部1年/紅貴虹/アート:トイ・ダイス/物型)

柴塚蒔和(男性/17歳/大学院修士課程/黄狂蛇/アート:イリデッセンス)

  • 最終更新:2012-01-15 01:02:06

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